松尾 鉱山 廃鉱 坑道 地下

 

Hydrogen sulfide 
有毒ガスで満たされていた坑道

撮影日 2008年9月

初めて身をもって有毒ガスの危険を味わった坑道。
酸欠は何度となく遭遇したが、それとは少し違った作用を体に引き起こす。
こういうときに限り、常に装備している酸素濃度計や小型の酸素ボンベを
忘れてしまう失態を披露。
通常は卵の腐った匂いを感じるが、濃度の高い硫化水素、
それは人間の鼻では感知できなかった。
この時私達は体中から硫黄の匂い、硝煙に近い程の匂いを発していて、
坑内の匂いも分からない状態だった。
それはこのオフ前に浸かった近場の温泉が原因。源泉かけ流しは当然だが、
硫黄分が凄まじく、露天風呂では目の前から湧き出す温泉の周りは
硫黄が付着しており、「なんとも体に良さそうな」、と言うか長湯は危険では?程の
硫黄分たっぷりのおすすめ温泉。
他の温泉がパチ物に見えてしまうほどの匂いと色だ。因みにここは混浴。


若いカップルがいて思わず「ん?家族風呂と間違えたか?」と開けた扉を
閉めなおして10秒考え込んで、もう一度扉を開けた。

と話は外れてしまったが
話の通り、硫黄を含んだ火山地帯、近くには噴火口の跡に水が溜まった湖も多数ある。
そしてこの坑道は過去に良質な硫黄を採掘していた鉱山の坑道。通称は「楽園の地下」と言う。
事前に「楽園の地下」と聞いて、提供者に「天国に行ってしまう危険な坑道なのか?」と
聞きなおした程だ。地上には有名な「雲の上の楽園」と言われる住宅跡が残る事
から名づけられたと言うが、本当に天国へ行ってしまう場所だった。
硫黄採掘坑道と分かっていたが、事前に良く調べれば良かったと思うw

 

採掘当時の坑内水は有水量の多い箇所の水でpH3.0〜2.5 少量の湧水滴水はpH1.0以下の強い酸性を有している。
現在では100m坑と112m坑の中間(883.9m)に開設した
恒久排水路から出水される。坑内水はpH1.0にもなり
1977年(昭和52年)から岩手県が通産省(現在の経産省)の補助を
受け、坑廃水処理施設を建設し
その中和施設へ送られ処理された後に河川へ排出されている。
そのおかげもあり、飲用に適用できるまでになり、
重金属の含有量が300〜500から60mg/Lに、
砒素が2〜3から0.01mg/Lまで減少し、
この処理効果を明瞭に示すものとなっている。
ただ施設の維持管理に年間7億円近い経費が必要になっている。

 

地上部は当時最先端の工夫をこらした
有名な住宅跡が残っている。

 

今回はこの鉱山の最下底にある坑道を探検する事となった。
昭和44年3月坑内より流出する硫黄化合物等
挙動調査が実施され、その結果坑内36m坑準からの坑内
湧水量はは全体の有水量の50%以上を占め、水質は
鉱体内を通過する事により悪化していく。
今回入坑する坑道を閉塞させ、坑内水位を上昇させる事で
坑内下部の湧水量を抑制し、、鉱体内通過による二次汚染を
防止する目的に転用された。
情報では坑口から約2200mで第二斜坑に至る。
その間には分岐枝洞は存在せず、坑道断面はおよそ3.4m×3.0m
で馬蹄型に厚さ30cmのコンクリート覆工が施された。
しかしながら、水位を上昇させる目的で、この坑道の奥は閉塞
プラグで閉塞されていると言われる。閉塞プラグの設置位置は
1800mの場所であり、設計に当たっては水圧13kg/uとし
岩盤のせん断強度のみに依存できないのでプラグの重量と
せん断強度を併用した型が採用された。
将来的な保全を含め、安全率を3倍にとることで、
仮プラグを含め、全長は46mにもなると言う。
閉塞工事は昭和45年に8月より開始し、12月に完了した。
坑内は次々と水没していき、翌年2月に100m坑より排水を
開始、しかしながら昭和47年5月に100m坑の崩壊により、
第二斜坑の112m坑準より排水を開始した。
閉塞当初は坑内から色々な物が流れ出てきたと言う。
坑内に置き去りにされていた軍手や長靴など、それ以外にも
かなりの数の物があったと言う。現在では年数もたったために
それは見られないと言う。
現在では整備された恒久排水路が100m坑と112m坑の間に
作られ、排水されている。かなりの汚染がある廃水だったが、
現在排出する廃水は透明度があり綺麗に見える。
しかし、今でも酸性度は高い。


現在は赤線より下は水没している。

 


私達がここに来たのは2013年から5年前になる。
噂に聞くと、最近この件に関して対策をとるために工事を行ったようである。

対策をとらなければ100m坑以下から水没している廃水が怒涛の如く噴出す
事になるだろう。(「スッポン」と一気に抜けることは無いとおもうが)

 

この坑道は崩落の危機を迎えており、現在では最大で
42mm坑道自体が圧縮していると書いてある。
プラグ自体の厚さは46mと言うことですっぽ抜けは
しないが、亀裂や坑道自体の外側に水が漏れた場合は
坑道の外壁を舐めるように進み、やがて坑道の周りを
酸性度の高い鉱水によりコンクリートは劣化し圧損
するのだろう。350万トンという多量の
毒性、酸性のある水が噴出すことになれば、
周辺に多大なダメージを与えてしまい、酸性に強い
植物しか育たなくなり、川に流れ込んだ場合は
魚類の大量死もあり死の川となってしまう。
左資料の写真では中心が手前から奥へ押し出す
様にせりだして見える。軌道は傾き、左手の排水路を
歪ませている。

 


この時は、この鉱山の種類が分かっていた筈なのに、
全く対策を忘れての探索になってしまった。
硫黄、硫化物、そして温泉地帯、近場のあらゆる場所に存在する火口跡、
当然何か出ていてもおかしくはなかったw

 

 状況開始

しばらくはバラストが敷かれているだけで、
軌道は存在しなかったが、100m奥からは軌道が
顔を覗かせるようになった。
後から敷設されたバラストに埋まっていただけだった。
右手には黒い堆積物を付着させた
鉱水用の溝がある。

 

金属を含む地層からか?
錆により赤茶けたコンクリート壁面には
赤いペイントで亀裂の場所を示していた。
酸性度が高い為に壁面の劣化が激しく、
触ると砂の様に崩れる場所もあり、
崩落の恐怖が頭をよぎった。

 

所々の亀裂以外にも、
コンクリートのつなぎとして用いられる
砂利までもが見えてきている。
コンクリートは劣化して剥がれるか、
溶けてしまっている。

 

直線に真っ直ぐと進む坑道。
軌道の錆は酷く、指でつまむと
崩れてしまう程だった。
原型を留めているのが不思議なくらいだ。

 

入坑方向を撮影。

頑丈に見えるコンクリート製の
坑道でも、所々の亀裂や
剥がれが見られる。

 

奥へ進むごとに劣化が激しくなる
坑内の壁面。亀裂からは鉱水が染み出し
微かだが壁面を湿らせている。
地面には上部より砂の様に崩れてきた
粉になったコンクリートが堆積している。

 

そして500m位だろうか?疲れから一次休憩を取ることとなった。

前日不眠での運転の為か?何故か体がだるく、黙って静かにしていると落着くが、
歩いたり、何か行動すると立ち眩みや目眩、耳鳴りがする。

 

何のためだろうか?坑道が続いていたのか?
長方形に切り取られた部分より
土砂が流れ込んでいる。
外壁と内部を調査するために削り取ったのか?

 

 

この耳鳴りや立ち眩み、目眩がこの坑道の警告だとは
この時点では気が付いていなかった。

 

現時点でどの位進んだだろうか?
現在は1300m位か?
前方を歩く隊長は100m先を進んでいる。

この時点から撮影する写真枚数が少なくなる。
体がだるく、

「俺の体はどうした?
普段はこんな事は
一度も無かったはずだ。
少し仮眠を取れば良かったか?」

探検に行く事で興奮し、少しでも睡眠をとる事が
できなかったが、遅れをとり皆に迷惑を
かけまいと、写真を撮る気になれず
ただ閉塞を目指し、奥を目指していた。

 

その時だった!最前方を歩く隊長が

「体がおかしい!目眩がする!」
振り返り話した。

その言葉を聞いてすぐにいつもと変った
自分の状態と同じと分かった。

(ガ、、、ガスだ。。。。。全滅する。)

「総員坑口方向へ退避!!!
 隊長!リバース!」

一瞬怒号の様に叫んだ!
すぐに頭をよぎった「酸素欠乏症」
閉塞しているとはいえ、通常は酸欠に陥る
水平坑道は数少ない。

ガスの恐れも考えられる、二酸化炭素とも少し違い、
一酸化炭素の様に酸素を
吸い込んだ気がしない肺を押される感じとも違う、
マッタリと効いてくる目眩や頭痛。

 

「あと数百メートルで閉塞地点だった」と
恐怖の場の状況
をあまり感じていない
隊長(右手)よっぽど閉塞点を
見てみたかったのだろうか。。。。

こっちはヒヤヒヤだった。

歩かなければ余計な酸素を消費せず、
目眩や立ち眩みが収まるために
一時休憩。
生存レベルの酸素は充分ある。

少し休憩したら出口に向かおう。

 

帰宅後に調べていて発見した資料には
「硫化水素等が発生し酸素欠乏となっているため、」と
初めからこの情報を手に入れていれば、
何らかの対策を取っていたかもしれないwと、その前に
酸素濃度警報器と携帯式酸素ボンベを
持参していなかったのが悪いですね。。。
Aの項目には(接続するパイプは〇〇坑の
入口部に解体され存置してある)と書かれており、
良く良く写真を見るとバッチリ!パイプが写ってました。
今回は酸欠体験探険となり、身をもって勉強ができた。
今回の体への作用を覚えておき、
次回の探険に役立つ事間違いなしだw

 

閉塞プラグと押し出すように変形した
最深部を見てみたかったが、
危険な坑道なために、もう二度とくる事は
ないと思う。寂しいが引き際も肝心だ。

 

 

遺構調査機構トップへ戻る

 

松尾鉱山 鉱山 廃坑 廃鉱 地下 竪坑 立坑 マイン